「なんもできない」の代名詞とし、その名を世に知らしめたうちのおかん。
仕事以外に興味がなかったのか、
それとも元々そういう能力の持ち主なのか分からんけども、
弁当箱には空気を詰め、
米を炊けばめっこかお粥。
キャベツの千切りはザク切りと化し、
カレーの人参は常に「ゴリッ」。
肉じゃがを温めたら火事になったこともあったし、
レンジでアルミホイルをチンして火を吹いたことは懐かしい思い出ですし、
レンジで琺瑯をチンしまくってレンジを壊し、
新しいレンジを買わされたことは一生忘れないと思います。
そんなおかんが関西に移住したのは今年の夏のこと。
引っ越しが終わって落ち着いたであろう頃、
「ねえ・・・茄子ってどうやって揚げるの?」
と電話が来た時はやや驚きましたが、
話を聞けば、あちらでは「朝ご飯の調理」を担当してるとかで二度びっくり。
所変われば人も変わるのか、
おかんの変貌っぷりとはるか様のスパルタには、いたく感嘆したものです。
はるか様、チャレンジャー。
それから2ケ月、
「あんたの卵焼きって何入れてるの?」や「じゃがいもってどうやって焼くの?」、「甘味噌ってどうやって作ってた?」等々、
料理の仕方を聞かれることも増え、
私たちの会話にも花がさくように。
まさかあのおかんと料理の話をする日がくるとは!
そんな日々が流れ、
彼女もそこそこの力をつけてきたであろう頃(昨日)。
おかん「ねえ、あんたのおでんってどうやって作るの?」
一瞬、「え、朝からおでん?!朝から?!?!?!」「あのおかんが?ついにおでんの作り方を?!?!?!」「おでん?!?!?!?!」とも驚きましたが、
聞けば、最近は晩ご飯の調理も担当することがあるそうで、
おかんが新たな頂に挑戦してることを知りました。
祝☆おかん、一日の食事の中で一番の華「晩ご飯」進出。
いやでも実際、あのおかんが。
「やる気」という言葉にとことん縁がなく、
やってもしょうがないが口癖で、
この家にいる頃、私が晩ご飯をお願いすればほか弁を買ってくるかマックを買ってくるくらいしかできなかったあのおかんが「晩ご飯を作る」ですからね。
そう思えば感慨の深さはマリアナ海溝なぞ目ではありませんし、
その深さだけで地球が割れそう。
たとえ70歳を超えても、やろうと思えばなんでもできる。
思いひとつで人間はここまで変われる。
人間の成長には限界がないんだな、と、それはそれは地球が割れる感慨深さでした。
もちろん私自身も、
おかんが晩ご飯を作っているという事実は素敵だなと思ったし、
何よりそこに挑戦する姿勢が素晴らしいなと思い、
今までかつてないほどにおかんを褒めました。
私「すごいじゃん!やるじゃん!カッコいいじゃん!やればできるじゃん!」
するとおかんは、少し照れ臭そうに「ふふふ」と笑った後、
「ここではそのくらいしないと生き残れないからさ」と。
その声は皮肉を言いつつも誇らしそうでした。
私「で、おでんの作り方なんだけど、私がいつも作ってる作り方でいい?」
おかん「いい、いい!あんたの作るあのおでんが食べたいの!」
私「じゃあ最初に。絶対に使っちゃいけないのが圧力鍋ね。OK?」
おかん「OKOK!圧力鍋ではんぺん煮ると、さぶろー山さんにめちゃくちゃ怒られるからね!」
私「そうそう、ちょっとはんぺんがべろーんってしただけなのに、それを実家でも会社でも吹聴されてそこに尾ひれもついて伝説になっちゃうからね!」
おかん「あのデブ、余計なことばっか言いやがって・・・!」
私「そうそう、アイツほどロクなことを言わねえ野郎はいないからね。
で、おでんはね、まず、大根の下茹でからはじめるんだけど、下茹でって分かる?」
おかん「米のとぎ汁で煮るやつ?」
私「そうそう。大根をおでんサイズに切ったら米の茹で汁で20分くらい茹でて、串がスッとささるくらいになったらそのまま冷める放置。完全に冷めたら軽く大根を洗って、大根の下茹で完了ね。」
おかん「うんうん。」
私「そしたら広口の鍋に大量の出汁と酒とかみりんとか塩とか醤油を入れて、ついでに大根も入れて、大根が動かないくらいの極弱火で煮る。ほんのり大根が煮染まったら、いったん火を止めて冷めるまで置く。」
おかん「うんうん。」
私「完全に冷めたら、水で戻した昆布とか茹で卵とかあく抜きした蒟蒻とか、練り物以外の具を入れて、また具材が動かないくらいの極弱火で煮る。そんで冷ます。」
おかん「うんう・・・ん・・・」
私「その後、再び火を入れながら練り物類を入れて具材が動かないくらいの極弱火で15分くらい煮て、また冷ます。」
おかん「うんう・・・ん・・・・・・」
私「あとは食べる時に1時間くらいかけてゆっくり温めればできあがり。

めっちゃ綺麗なおでんができるよ!」
おかん「・・・・・ねえ、あんたのおでんって何回冷ましてんの・・・?」
私「大根の下茹でで冷まして、大根の煮込みで冷まして、練り物以外の具で冷まして、練り物で冷ますから・・・合計4回かな。」
おかん「一回冷ますのに何時間かかるの?」
私「この時期なら5時間くらい・・・?真冬はもうちょっと早いから4時間くらいとか・・・?」
おかん「おでん作るのに何日かかるの?」
私「私は3日くらい前を目途に仕込んでるけど。」
おかん「何考えてんの?」
私「え?美味しくなあれとか?」
おかん「いや、おでんごときにこんなに時間とられていいの?あんたの人生おでんで終わりにならない?おでんだよ?一回しかない人生だよ?どんだけおでんに命かけてんの?
あんたの人生おでんじゃん!!!」
親切丁寧に教えて返された言葉は「あんたの人生おでん」。
人生おでんて。
ご清聴ありがとうございます。
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ありがとうございます。ぺこりぺこり。
その後、調味料の量なども聞かれたのでなんとなく教えてはおいたけど、多分その通りに作ってないと思います。
絶対作ってない。
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