
本編とは何ら関係のない画像「夜のおかめん」。
昼間はかわいく生息してるんですけどね↓↓↓

ほんの数時間ズレただけで、夢にでてくる。
さてさてさて。
一昨日からの続きで無人販売のバイトの思い出。
(その①→ )
(その②→ )
(その③→無人販売における人間ウォッチングの思い出。~始めてのお客さんは勇者~)
初回から度肝を抜かれたあたしは、
気を引き締め、
パラソルを近づけ、
袋の数と現金を確認しつつ、
時には売り子と化し、
野菜をさばいた。
最初こそ、人口密度<熊密度を疑った土地だったけれど、
日が昇れば、結構人が来るもんで、
昼時には代わる代わるお客さんが訪れた。
時には近所のおばあさま方がやってきて、
代わる代わる話し相手にもなってくれた。
話し相手が「人間であること」が何より嬉しかった。
代わる代わるやってくるお客さんにも、いろんなパターンがあった。
1人で来て、大量に買っていくお客さんもいれば、
5~6人で来て、1袋を分けるお客さんもいる。
野菜の中身にケチをつける人もいれば、
ここのお野菜だと子供がすっごく喜ぶから。と嬉しい言葉をかけてくれる人もいる。
料金箱に5円を入れて1袋500円の野菜を持ち帰ろうとする人もいれば、
お釣りはいらないよ。と、1袋1,000円を入れてくれる人もいる。
半日もすれば、どんな人が良い人で、どんな人が悪い人か、
あたしにもだんだん分かってきた。
まず、あわよくば・・・!を狙ってくる人は、
声をかけた時の驚き方がハンパない。
「いらっしゃいませー。」
と、たった一言声をかけただけなのに、
「くぁwせdrftgyふじこlp・・・!」
と、声にならない声をあげた後、
まるで宇宙人を見たかのような顔であたしを凝視する。
普段なら、
そんなに見つめられても・・・と照れるところだけれど、
完全に目が泳いでる。
ある意味、逝ってる。
しかし、そういう輩は、
良心の呵責からか、大量に野菜を買ってくれることが多かった。
多分、防犯カメラではなく人を雇った理由はソレなんだろうな。
ということに気づいたあたしは、
ここぞとばかりに野菜を勧め、
1人で10袋買ってくれた罪悪感の塊みたいな人もいた。
無人販売とは、人々の善意によって成り立つ商売なのだなーと、つくづく感じた。
そんなことを思いつつ、穏やかな午後を過ごし、
野菜の残りもわずか4袋となった頃。
そこそこいいお値段のする高級車が止まり、
中から身なりの良いご夫婦が出てきた。
歳の頃は50代後半くらいだろうか。
キンキラキンの腕時計と白い歯が煌煌と光るご主人と、
それにふさわしいキラキラの金歯を持つ奥様だった。
車から降りた二人は、新鮮な野菜を前に、キャッキャしてる様子だった。
あたしは、「いらっしゃいませー」と声をかけ、
入っているものや値段を説明した。
「こんなに入って500円なんて夢のようね!」と、奥様。
「じゃあ、買って帰るか。」と、ご主人。
「ありがとうございます!おいくつお取りしましょうか?」と、喜ぶあたし。
「じゃ、あるだけ貰おうか。」と、太っ腹なご主人。
「そうね、帰り道で〇〇さん家にもお裾分けしましょうか。」と、中身を確認する奥様。
この時点で野菜の残りは4袋。
予想以上に早く売りきれることが嬉しかったあたしは(なぜなら、売りきれた時点で帰ってよかったから)、
「じゃ、お車まで運びますね。2,000円になります!」
と、袋を手にした。
そこまではよかった。
「全部買うから500円な!」
と、ご主人。
いらん提案である。
ご主人があまりにも当たり前のような顔で言うので、
「すみません。1袋500円なので、4袋なら2,000円になります。」
と、返すも、
「いや、全部買うから500円だろ。」
と、当たり前のような顔で返される。
残り4袋の野菜を1袋分の値段で叩き売り。
たとえばこれが、別の土地ならアリな方法かもしれない。
だけれども、ここは新潟。
値引きの分化は、ない。
そこに付け加えて、これはあたしが作った野菜ではなく、
あたしは、ただのバイト。
値引きだのなんだのの権限はない。
おじさん(生産者)だって生活がかかっている。
500円だって1,000円だって大事な収入源なことも知っている。
申し訳ないけれど、
自分がバイトである旨、
そこまでの権限がない旨、
ここは新潟である旨、
よって、値引きは勘弁してほしい旨を伝えると、
「大丈夫、買ってやっから!」
と、何の根拠もない大丈夫さをアピールされる。
日本なのに日本語が通じないせつなさよ。
とは言え、
たった500円で4袋も持っていかれるワケにもいかないので、
「お願いします、お願いします、1袋500円なんです!」
と、ひたすら頭を下げるも、
「ほら、とっとけ!」
と、ご主人はあたしの右手に500円玉を握らせ、
袋を4つ手に取った。
DOROBO-!
「いやいや、あの、1袋500円なんで、もう1,500円・・・!1,500円を・・・!」
と、慌てふためくあたしを横目に、
颯爽と野菜を積み込むご主人。
DOROBO-!
「すみません、すみません。お代を・・・もう1,500円を・・・!」
と拝み倒すも、
「じゃ、ありがとッ!」
と、ご主人は車に乗り込んでしまった。
DOROBO-!
車のエンジンがかかり、
心底困り果てていると、
奥様があたしの横に立ち、
そっと手に光るものを握らせてくれた。
奥様がぎゅっと手を握ったので、
目視こそはできなかったものの、
手の平には何枚かの手応えを感じた。
ハッとするあたしに、奥様は目くばせをした。
その様子から、
「うちの旦那は一度言い出すと聞かない人でごめんね。ちゃんと払うから内緒にして。」
ということが伺えた。
あたしはそこに、「困ったご主人と清く正しい奥様」という夫婦像を見た。
まぁ、世間一般的にはどうかと思うご主人だけれど、
確かに、世の中にはそんな男もいる。
でも、そんなご主人だからこそ、
清く正しい奥様がついて、そっとご主人のケツを拭いている。
そんなご夫婦に、ここであたしが言葉を発してはいけない。
貰うものは貰った。
あとはおとなしく見送るのが吉。
と、奥様の優しさを噛みしめ、
めずらしく空気を読んだあたしは、
深々とお辞儀をし、お二人を見送った。
高級車が見えなくなり、
そっと左手を開くと、
手の平には。
103円が光っていた。
すげえ夫婦だな。と思いました。
ご清聴ありがとうございます。
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ありがとうございます。ぺこりぺこり。
この無人販売では何日かお世話になりましたが、この夫婦が堂々のNo.1。
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